食材に適した包丁と切り方
食材を切るときの包丁の使い方は、大きく分けて3種類になります。
1.包丁を奥から手前の方に動かしながら切っていく方法
2.包丁を手前から奥の方に動かしながら切っていく方法
3.包丁を動かさず、真下に切っていく方法
それぞれの切り方には食材との相性があり、相性がマッチしないと食材をダメにしてしてしまうこともあるんです。包丁や切り方で、料理の出来が変わってくるのですね。また、それぞれの切り方には適した包丁があります。今回は、上記3つの切り方と包丁についてご紹介します。
【切り方1:引き切り】食材の切り口がきれいで、味を損なわない
引き切り | |
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適した食材 | 刺身にする魚の身(冊) 柔らかい肉 |
適した包丁 | 刺身包丁 牛刀 筋引包丁 長めの三徳包丁 |
引き切りは、柔らかい食材に対して使う丁寧な切り方のことです。特に刺身を切る場合には、絶対に必要な切り方です。引き切りの包丁の動かし方は、刃元から刃先に向かって引いてゆきます。そして、包丁の重さだけを利用して上からの力がなるべくかからないようにします。
なぜ引き切りをするのか?理由は2つです。1つは、切り口をクッキリと鮮やかにすること。もう1つは、魚や肉の細胞を潰さないためなのです。刺身の場合、細胞を潰してしまうとどうなるでしょうか。潰れた細胞からうまみの成分が外に流れ出てしまいます。また、逆に余分な水分がしみこみやすくなり、味が落ちてしまうのです。
一流の和食料理人は、刃渡り30cm以上の刺身包丁を用い、その長い刃渡りをフルに活用して刺身を切ります。家庭で30cmの刺身包丁を使うのは難しいですが、可能な限り刃渡りの長いものを使いたいですね。柔らかい肉を切る牛刀の場合も同じですが、魚に比べて細胞の結合が強いため、多少上からの力が強くなっても問題ないでしょう。
間違っても包丁の一部分だけで、押さえつけて切るようなことはやめましょう。最悪の場合、身が崩れて見栄えが悪くなり、味に影響が出てきてしまうこともあります。
【切り方2:押し切り】力を入れて切る硬い食材に最適な方法
押し切り | |
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適した食材 | 魚の切り身 硬めの肉 冷凍物 |
適した包丁 | 出刃包丁 牛刀 冷凍包丁 三徳包丁 |
押し切りが適している食材は、高さ厚みがあるもの、骨があるもの、硬いものです。こういった食材を切るときは、上からの力が必要になります。「引き切り」では上からの力が加えにくく、一回の動作で切るのは難しいのです。
とはいえ、なるべく食材の細胞を潰したくないので、刃渡りの長い包丁の方が仕上がりが良くなりますよ。本職は出刃なら21cm以上、牛刀なら27cm以上の包丁を使われる方が多いです。
冷凍された食材はカチカチに凍っていて、そのまま切ると普通の包丁なら刃が欠けたり折れたりしてしまいます。そんな時は、冷凍食材専用の冷凍包丁を使いましょう。刃先がギザギザになっていて、のこぎりのようなイメージです。冷凍包丁がない場合は、ある程度解凍すると出刃包丁や牛刀包丁でも切れますよ。
なお牛肉や豚肉を切る場合、引き切りすることを指示しているテキスト等が多いですが、実際の作業現場では、押し切りしている場合をよくみかけます。個人的な見解ですが、牛豚肉の場合は、刃渡り全体を使って切れば、押し切りでも問題ないでしょう。
【切り方3:落とし切り】野菜を連続して切る時に適した方法
落とし切り | |
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適した食材 | 野菜類 |
適した包丁 | 薄刃包丁 菜切包丁 牛刀 三徳包丁 |
基本的に野菜類は落とし切りで切りますが、それは「せん切り」などの連続した早い作業をすることが多いからです。キャベツのせん切りなどは高速連続切りの代表ですね。また、根菜類などの硬い野菜にも落とし切りを用います。
細胞の潰れの観点から言えば、あまり良くない切り方でしょうが、作業効率の点では適しています。
まとめ
王道な包丁の切り方を、3つ紹介しました。家庭料理では、この3つの切り方がマスターできればバッチリです。切り方一つで、料理の味も見た目も変わってきますよ。
王道の切り方3つに適した包丁は、三徳包丁と牛刀包丁です。三徳と牛刀では、使い勝手や手入れ、価格面から三徳包丁のみをお持ちの方も多いですね。だからと言って、新たに牛刀を購入しなくても大丈夫です。
今お持ちの三徳包丁で、刺身や柔らかい肉を切るときは「引き切り」、硬い食材には「押し切り」、野菜は「落とし切り」で切ってみてください。一番、見た目や味の違いがわかるのものは刺身だと思うので、ぜひ試してみてくださいね。
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