【釣りに最適な包丁】出刃包丁は刺身包丁と使い分けが必要、舟行包丁なら1本でOK
「釣った魚をさばく包丁として、出刃包丁、三徳包丁、舟行(ふなゆき)包丁のどれがいいですか」という質問をいただきました。3つとも魚をさばくのに適した包丁だと感じますが、釣りに持って行くならどの包丁がよいでしょう。
釣り用の包丁は、専門性を求めるか万能性を求めるかによって、選ぶ包丁が違ってきます。今回はこの「専門性」「万能性」の2つの視点から、選ぶべき包丁とその特徴を解説します。
【専門性を重視するなら】出刃包丁と刺身包丁の2本を揃えよう
本格的に大型の魚や鯛など骨の硬い魚をさばきたい、刺身の美味しさや仕上がりの美しさにこだわりたい、という専門性を重視する人は、出刃包丁と刺身包丁の両方を揃えるべきです。
出刃包丁の特徴:厚くて丈夫。刃先が鋭く、魚をさばくのに最適
出刃包丁は、厚くて丈夫なうえ刃先が鋭いので、魚をさばくにはもってこいの包丁です。刃渡りは職人なら21cm程度のものを使用しますが、家庭用なら15cmで十分です。ただし、切り身を切るなら18cmあったほうが切りやすいですね。
出刃包丁の仲間に、相出刃(あいでば)包丁という価格も比較的安く、刀身(とうしん)の幅が狭い種類があります。相出刃包丁は普通の出刃包丁に比べて薄くて軽いので、大型魚の骨の切断や頭部の解体には少し頼りなく感じますが、三枚に卸す場合には普通の出刃包丁よりも使いやすいです。個人的に好きな包丁です。
刺身包丁の特徴:細胞を潰さず、綺麗な刺身が切れる
刺身包丁には、関東型と言われる先の四角い蛸引(たこびき)包丁と、関西型と言われる先の尖った柳刃(やなぎば)包丁があります。どちらも切り身の魚を刺身にするために用いられますが、柳刃包丁の方が扱いやすいです。
薄くて細く、刃渡りが長い刺身包丁の特性を生かすことによって、切り口の角が立ち、細胞をつぶさずにきれいな断面の刺身が切れます。職人は刃渡り30cm程度のものを使用しますが、家庭用なら18~21cmで十分です。
釣った魚を出刃包丁でさばき、刺身包丁で刺身にする、というように、この2本の包丁を使い分けることで専門性は十分発揮できます。しかし、逆に言うと、専門性が強すぎて、これ以外にほとんど使い道がありません。
最低でも1週間に1回は魚を扱うのなら、この2本を揃える価値はありますが、使う機会が滅多にないのなら、包丁差しの中でさびさせるだけになりかねません。
【万能性を重視した1本】三徳包丁よりも魚をさばきやすい舟行包丁が便利
万能性を求めるなら、三徳包丁や舟行包丁が扱いやすいです。特に、釣り用として持って行くなら、舟行包丁が役立ちます。次に2つの包丁の特徴を解説します。
三徳包丁の特徴:手入れが楽で扱いやすいが、大型魚は切れない
一般的な万能包丁として、現在では三徳包丁が主流になっています。三徳包丁は、幅広い食材に対していろんな切り方ができる、非常に使い勝手の良い包丁です。ステンレス系の材質を用いているものが多く、手入れも楽ですし、形状からしても扱いやすい包丁と言えます。
魚をさばく点においては、小型魚は問題なくさばくことができます。しかし、刀身が薄いので大型魚の頭や背骨の切断は難しいです。刺身は自分で食べるのを楽しむだけなら何とか切れます。
舟行包丁の特徴:硬い骨の切断から刺身まで切れる
舟行包丁は特殊包丁の部類になります。もともと、舟行包丁は漁師が船の上で料理をつくるための包丁として作られたものです。ですから、魚をさばくのに適している反面、野菜が切りにくく、刀身の厚さもあるので、多少硬さのある野菜は切っている途中で食材が割れてしまうこともあります。
形状は相出刃包丁に似ていますが、相出刃包丁よりもやや薄く、切刃の幅も広くなっています。そのおかげで一応刺身も切ることが出来るようになっています。なお両刃仕様が多いですが、片刃のものもあります。
ちなみに、大きな魚や硬い骨の切断ができるかどうかは刀身の厚さが関係しています。そこで、出刃包丁、三徳包丁、舟行包丁について刀身の厚さを比べてみました。私が持っている刃渡り18cmの出刃包丁は、峰の付け根(持ち手側の太い方)で7mmありました。同じ刃渡りの舟行包丁だと3~4mm程度、三徳包丁は2mm程度しかありません。
以上のことから、舟行包丁は出刃包丁にはかないませんが、三徳包丁よりも硬い骨が切断しやすいと言えます。舟行包丁は、三徳包丁よりも魚の加工について強みがあるのです。
【舟行包丁はステンレス製を】炭素鋼を使用した包丁よりサビに強くて手入れも楽
舟行包丁は高知県の特産品である土佐打刃物に多く見られ、もともとは土佐の漁師のために作られたのが最初ではないかと推測します。材質は炭素鋼を使用したものが多く、船上で使っても錆びにくくするため、黒打ち仕上げにしているものが目立ちます。切れ味は非常に良いのですが手入れが大変で、黒打ちでも手入れを怠るとさびてしまいます。
その点、ステンレス製の舟行包丁はサビに強くてお手入れが楽です。炭素鋼と比べて切れ味は劣りますが非常に錆びにくいので、まめに手入れできないのであればステンレス製が重宝します。釣り用包丁はやはりサビに強い材質を選びたいですね。
舟行包丁の中には、良い鋼材を使用した1万円以上するものもありますが、それほど高いお金をかけなくても比較的安価なもので十分です。もちろん家庭でも万能包丁として使用できますよ。
まとめ
釣りに持って行く包丁として、出刃包丁、三徳包丁、舟行包丁を見てきましたが、一本の包丁で解体から刺身までこなしたい場合には舟行包丁が重宝すると言えます。三徳包丁ではそこまでこなすのは難しいです。
また、舟行包丁が使われる頻度を考えると、決して高い包丁を買う必要はありません。5,000~6,000円ぐらいまでが妥当かと判断します。ただし、舟行包丁はすべてにおいて中途半端であることは否定できません。それが満足できなければ、出刃包丁と刺身包丁の2つを揃えたほうがいいですね。
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